ひとり句会:夏

【第1回:12時間耐久(耐えてない)ひとり句会】


サルビアの花いま町は雨の底
サルビアのはないままちはあめのそこ


我もまた朱に交われり花石榴
われもまたしゅにまじわれりはなざくろ


短夜や遠くで始発のがたんごとん
みじかよやとおくでしはつのがたんごとん
細野晴臣終わりの季節」のイメージ。


紫陽の花ほんとうは好きでした
あじさいのはなほんとうはすきでした
「恋愛における後出しジャンケン」の話に感じつつ。


ざくろ今朝もきみを抱かざりし
はなざくろけさもきみをだかざりし
ま、ずっとオアズケってことです(あはは)。


寄道の背の広くありて白絣
よりみちのせのひろくありてしろがすり


青梅やごりごりといま動く骨
あおうめやごりごりといまうごくほね
ノドボトケって、こういうイメージ。


滴りて我は午睡の如く死に
したたりてわれはごすいのごとくしに
フランス語では「小さな死(la petite mort)」と言うそうです。


覚めてまた熟れしすももを潰しおり
さめてまたうれしすももをつぶしおり
スモモはモモより性的な若さやあやうさを感じる。


曾祖父の鼻歌「イチゴの片思い」
そうそふのはなうた「イチゴのかたおもい」
想像すると悪夢みたいだけど(笑)。


汗ひいてまだもの言わぬきみと我
あせひいてまだものいわぬきみとわれ
風邪を引かないようにしたいものです。


昼寝する黒子と傷を目で計り
ひるねするほくろときずをめではかり


あなたとはいつも空間識失調
あなたとはいつもくうかんしきしっちょう
目が悪いもの同士だとこうなる。


夏葱を焼いて目にしむ夕餉かな
なつねぎをやいてめにしむゆうげかな
白葱を焼いて少し醤油をかけて食べる。


鱧の皮また江戸っ子の知らぬこと
はものかわまたえどっこのしらぬこと
「関西人は鱧の骨切りができてあたりまえ」と言うのは嘘ですゴメンナサイ。


肌脱ぎのここからここは切り取り線?
はだぬぎのここからここはきりとりせん?
「やわらかサイボーグ」は切り取り線付きです(笑)。


この雨に海、見に行くとバカノハナ
このあめにうみ、みにいくとバカノハナ
「バカノハナ」はハマゴウ(浜栲)の別名。


荒梅雨や溺るるごとく風呂に入る
あらつゆやあぼるるごとくふろにいる
今日は窓を開けただけで溺れるような湿気でした。


音のしてジューンドロップ月なき夜
おとのしてジューンドロップつきなきよ
「ジューンドロップ」=この時期に見られる果樹の自然落果のこと。


いま夢に匂ったような桐の花
いまゆめににおったようなきりのはな
道を隔てたお向かいの庭で、煙るように咲いている桐の花。


雨深くともめでたき夜の麦酒かな
あめふかくともめでたきよるのばくしゅかな
バーレーン戦が好結果となることを見越しての乾杯……。


香水を変えても風は東向き
こうすいをかえてもかぜはひがしむき


野暮天と夏の句ならべ湯を掻けり
やぼてんとなつのくならべゆをかけり


さかしまに我、愛すべき金魚かな
さかしまにわれ、あいすべききんぎょかな


起きて夢うつつのままに夏至過ぎぬ
おきてゆめうつつのままにげしすぎぬ
そうです、昨夜は夏至でした。


山梔子に雨香しく朽ち腐り
くちなしにあめかぐわしくくちくさり
なぜ街路樹にクチナシを植えるんでしょうね。


水鉄砲抱いてきみは眠りしか
みずでっぽういだいてきみはねむりしか
もうすっかり空砲だけどな。