ふたり句会:夏

【酔月句】


夏痩せて男女のことはそれっきり
なつやせてだんじょのことはそれっきり


滋養とかいう文字かすむ夏痩せて
じようとかいうもじかすむなつやせて


帰るのか言葉それっきり水の月
かえるのかことばそれっきりみずのつき


愛荒れて実梅ばらばら我に降り
あいあれてみうめばらばらわれにふり


夜濯やうすむらさきの不倫して
よすすぎやうすむらさきのふりんして
夜濯とは夜する洗濯のことなり。


遠雷や不貞なじれる耳ざわり
えんらいやふていなじれるみみざわり


折れるまで抱けよと言えず土用波
おれるまでなけよといえずどようなみ


ラムネ飲む女ひとりの涼しさよ
ラムネのむおんなひとりのすずしさよ
シャンパンじゃなくてね。


芯折らばわれ受粉せり百合の花
しんおらばわれじゅふんせりゆりのはな


あんず噛む温暖化より今朝の恋
あんずかむおんだんかよりけさのこい


ひとり寝て月と風とに灼かせおり
ひとりねてつきとかぜとにやかせおり


遠雷や人責める声泣いていて
えんらいやひとせめるこえないていて


玉葱のうす皮の如き齢かな
たまねぎのうすかわのごときよわいかな



【無果月句】


あんず割るホテルの窓は開かざり
あんずわるホテルのまどはひらかざり
あたりまえだ。(無果月談)


日盛りに剃刀あたる暗き家
ひざかりにかみそりあたるくらきいえ
今はきき手が不自由なので電気剃刀ですがね。(無果月談)


我はいま我慢に我慢鳳仙花
われはいまがまんにがまんほうせんか
鳳仙花の種は指で触ると爆ぜるのです。(無果月談)