ひとり句会:春

左目の腫れもの熱き桜桃
ひだりめのはれものあつしゆすらうめ


春の闇ちいさく低く咳をする
はるのやみちいさくひくくせきをする


乙女座のおとこは憎し目借時
おとめざのおとこはにくしめかりどき


我もまた憎まれて在る暮の春


文覚の溺れるまでの春の雨
もんがくのおぼれるまでのはるのあめ
傘の差し方が下手なのか、いつも肩口を濡らしてしまう。


春雷やどこか遠くに不意の雨
しゅんらいやどこかとおくにふいのあめ


もの言わぬ子と打ち合いて紙風船
ものいわぬことうちあいてかみふうせん


菜の花雨ちょっと遠くを見て帰る
なのはなあめちょっととおくをみてかえる


春の夢ためらい傷のある如し
はるのゆめためらいきずのあるごとし


春眠や猫を閨から放り出し
しゅんみんやねこをねやからほうりだし