ひとり句会:春
安からんことを四月は思い出し
やすからんことをしがつはおもいだし
春灯洩る隣家ほどなく別居せり
しゅんとうもるりんかほどなくべっきょせり
春嵐や途方に暮れしモノレール
しゅんらんやとほうにくれしものれーる
羽田閉鎖で立ち往生……東京は大変だったそうですな。
またひとつ恨みを買いし蜆汁
またひとつうらみをかいししじみじる
体温計右脇で割る春の風邪
たいおんけいみぎわきでわるはるのかぜ
体温計が割れるって?と思ったアナタは若い人。
白魚や透けるいのちをすすりこみ
しらうおやすけるいのちをすすりこみ
気の利かぬ蜆の音や新所帯
きのきかぬしじみのおとやしんじょたい
しゃぼん玉あの角曲がれ恋敵
しゃぼんだまあのかどまがれこいがたき
前髪の湿りゆく憂さ春の雨
まえがみのしめりゆくうさはるのあめ
一つ枕サイレン遠く朝寝して
ひとつまくらさいれんとおくあさねして
近くの工場のサイレンがね、9時と5時に鳴るんだよ。
勿忘草好きで別れた人ばかり
わすれなぐさすきでわかれたひとばかり
花占女はいつも二分法
はなうらないおんなはいつもにぶんほう
曲馬去りぶらんこ乗りの遅い春
きょくばさりぶらんこのりのおそいはる