ひとり句会:春

サンダルを素足ではいて春深し
さんだるをすあしではいてはるふかし


花の雨ふたりは舫い濡れてゆく
はなのあめふたりはもやいぬれてゆく
詠み返してもイヤな句だわ……小恥ずかし。


風光るオレンジ色のまぶた裏
かぜひかるおれんじのいろのまぶたうら
こりゃ「おもい」(はっぴいえんど)だね。


花茣蓙の織り目のままに花疲れ
はなござのおりめのままにはなづかれ


椿落つおとこの観念何に似て
つばきおつおとこのかんねんなにににて
「諦念」の方がいい?


春の風邪まぶたの裏の暗き闇
はるのかぜまぶたのうらのくらきやみ


誰が来たと思い振り向く落ち椿
たがきたとおもいふりむくおちつばき


春の星きみの黒子の数数え
はるのほしきみのほくろのかずかぞえ
だからあんまり数えるなってば。


喧嘩してゴメンゴメンとおぼろ月
けんかしてごめんごめんとおぼろづき


春尽きてひっつめの髪解く理由
はるつきてひっつめのかみとくりゆう


春雨や鏡も見ずの薄化粧
はるさめやかがみもみずのうすげしょう


春潮や破船のかげに息つめて
しゅんちょうやはせんのかげにいきつめて
サーフィン俳句……広がらない(笑)。


朝寝して朝湯してまだ不足あり
あさねしてあさゆしてまだふそくあり
でも、朝酒まで飲んじゃうとただの「人でなし」になっちゃうからね(自粛)。


花粉症借りた命のように生き
かふんしょうかりたいのちのようにいき


花粉症みんながそうで寂しかり
かふんしょうみんながそうでさびしかり


美印の輪郭ゆがむ花粉症
びじるしのりんかくゆがむかふんしょう
美印=美人。


目刺焼く生業に何の不平なく
めざしやくたつきになんのふへいなく


朝寝して女ひとりの腕枕
あさねしておんなひとりのうでまくら


春昼や口あいたまま山手線
しゅんちゅうやくちあいたままやまてせん
乗客も電車も。


春月やぬっと昇ってぬっと堕つ
しゅんげつやぬっとのぼってぬっとおつ


あふれ出てこぼれるさまや雪柳
あふれでてこぼれるさまやゆきやなぎ


小走りのきみの背を追う花疲れ
こばしりのきみのせをおうはなづかれ


口あけぬ浅蜊ひとつが手に負えず
くちあけぬあさりひとつがてにおえず
口開けぬ貝は死んだ貝。諦めろ。


花疲れ地口のように馬鹿と言い
はなづかれじぐちのようにばかといい


「馬鹿」と言う者が馬鹿よ、と春の風邪
ばかというものがばかよ、とはるのかぜ
まったく。