2007-01-01から1年間の記事一覧

木犀の香に眉ひそむ西施かな もくせいのかにまゆひそむせいしかな こっちのほうがしっくりくる?ストレートすぎる?

木犀の香に咳込んで西施かな もくせいのかにせきこんでせいしかな 西施の顰(ひそみ)に効(ならう)う、の故事から。

月の雨知つてひとりの夜もある つきのあめしってひとりのよるもある 雨で見えない月は「雨月」、曇りで見えない月は「無月」。

腰据へて桃ねぶり喰ふおとこ在り こしすえてももねぶりくうおとこあり 果糖も太るという事実を知ってか知らずか。

猫じゃらしまずは噂と言い含め ねこじゃらしまずはうわさといいふくめ 女の噂話と言うのは、尾鰭がつくよりまずマクラが長い。

風はらむシャツ少年は沙魚釣りに かぜはらむシャツしょうねんははぜつりに 日暮れまでには帰ってらっしゃいね。

深川を浅く渡つて秋彼岸 ふかがわをあさくわたってあきひがん ちなみに東京には深川という名の川はないのですって。 間引菜や箸さがす間に茹であがり まびきなやはしさがすまにゆであがり 時には素直に自分の手際の悪さに驚いてみる。

ただひとつ余所向いて咲く秋薔薇や ただひとつよそむいてさくあきばらや S氏、退院おめでとうございます。

翼もて近づく月は冷ややかに つばさもてちかづくつきはひややかに 旅に出るなら、夜の飛行機。

肩越しに「あれは無花果」夫の聲 かたごしに「あれはいちじく」つまのこえ ああ、そうですか。

呼ばれたるこころもちして鉦叩 よばれたるこころもちしてかねたたき 無花果亭の秋……夜は虫の音、朝は鵙。もはやウルサイ。

秋の夜の漁師のトルソ風に起つ あきのよのりょうしのとるそかぜにたつ 小菅文雄氏の「湘南漁師」という言葉が耳から離れない。

沙魚食はぬ羽田の沖は今日も雨 はぜくわぬはねだのおきはきょうもあめ なぜ羽田の沙魚を食べないのかは安西均「東京湾の小さな話」による。

片耳にさやけし波の音去らず かたみみにさやけしなみのおとさらず S氏、外字骨腫切除手術の翌朝。バニラ風味の麻酔は却下されたと。

朝の夫神経衰弱鵙啼けや あさのつましんけいかびんもずなけや 低血圧で寝起きの機嫌が悪いのは、もはや罪です。 鵙啼けや独居に馴れず朝未だ来 もずなけやどっきょになれずあさまだき なぜ鵙の声はこちらの弱気にしみるのだろう。

巴旦杏の実落つるを待つて秋長し はたんきょうのみおつるをまつてあきながし 巴旦杏の実は熟しても自ら落実しない。待ってても無駄だよ。

石榴割く耐へ難きことするやうな ざくろさくたえがたきことするような それが耐え難いと感じたのは最初だけ(以下略)。 裂け落つる石榴よ午後のひだるさよ さけおつるざくろよごごのひだるさよ

へちま水朝の露とか溶けてをり へちますいあさのつゆとかとけてをり へちま水うすきみどりの朝化粧 へちますいうすきみどりのあさげしょう 五十男の独居にヘチマコロンのある風景。ひげ剃り後にですかそうですか。 秋高しHILLSよあれは墓標かな あきたかしひ…

独居わびし魂離るまで虫を聴く どっきょわびしたまさかるまでむしをきく

流星は金平糖口あんぐりと りゅうせいはこんぺいとうくちあんぐりと 今年の夏はペルセウス座流星群がすごかった……見てないけど。 波乗りと波訊いている夏の涯 なみのりとなみきいているなつのはて ひぐらしや離散する家静かなり ひぐらしやりさんするいえし…

秋未だ来波乗りに恋したままで あきまだきなみのりにこいしたままで 「秋が来ない」と「飽きがこない」をかけて。自分への意思確認。

ここいらは秋まだ遠しジェット吼ゆ ここいらはまだあきとおしじぇっとほゆ

向日葵や六郷土手まだ秋めかず ひまわりやろくごうどてまだあきめかず こぼれ種の巨大ひまわりでは、ソフィア・ローレンにはなれず。

まだ白く泡立つ波や夏の涯 まだしろくあわだつなみやなつのはて

立て膝で輪をひとつ吹く端居かな たてひざでわをひとつふくはしいかな いっこうに煙草を止めぬひと、飄々と端居して呑気に輪を吹く。 門火焚く生き別れたる我のため かどびたくいきわかれたるわれのため 誰を迎えるでなく、現世に迷う自分を迎えるために。 …

誘導灯のすじ引く夏や羽田沖 ゆうどうとうのすじひくなつやはねだおき

夕顔や向かうは知らぬ風吹く地 ゆうがおやむこうはしらぬかぜふくち 多摩川の川崎側から東京を眺める時、いつも思うこと。

舟は去る暗い水辺よ溝萩よ ふねはさるくらいみずべよみそはぎよ

独居愉し呪詛するやうに門火たく どっきょたのししゅそするようにかどびたく

第365回 浮気句会

かくも長きだんまり愉し夏氷 かくもながきだんまりたのしなつごおり 冷し中華はじめましたと達筆で ひやしちゅうかはじめましたとたっぴつで 近所の中華屋さんのお品書き。美味しかったら言うことないんだけど。 裸子と汗かき競ふ午后三時 はだかごとあせか…